2014/10/04

ADULT FAIRY TAIL Act.4


~4幕
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初めにした約束通り、館内を移動する時、マリナは必ずシャルルについて回るようにしていました。

自分の好きに動けないということは、彼女には一番の苦痛でしたが、ここはそうも言っていられない、何が潜むかわからない魔法の館。
自由と危険が、隣合わせの場所なのです。
少々の我慢と引き換えに、命の保証がされるなら、彼女は迷いなく後者をとるでしょう。











「ねえシャルル、今日はあっちに行ってみましょう!」



幸い、そんな退屈も感じないほどのスリルに満ちた場所なので、彼女の好奇心は大変充実していました。

一度通った道が、帰りも存在しているかわからないような場所で、それでもシャルルは、素晴らしい記憶力と洞察力、そしておそらく魔法使いから教えられた知識で、立派なナビゲーションをしてくれていました。

この間開けたドアの向こうは、怪しげな光を放つ、巨大な水晶がどこまでも突き建つ洞窟でした。

屋根裏らしき所を上ると、まるでこの世のすべての知識を集結させたかのごとくの図書室で、この時は、興奮したシャルルを引っ張りだすのに3日ほど苦労しました。

飾りだと思っていた鎧戸の向こうを覗くと、なんだか得体の知れない小さなものが、まるで仕事でもしているかのように忙しく動きまわるのが見えました。

いくら食べてもなくならない、ビスケットの湧き出る袋(これは翌日、シャルルに取り上げられました)、バスタブに潜ると人魚と目が合う、室内のはずなのにベッドに寝ると本物の夜空が広がる部屋、ある時は天井から花が降ってきました。

それはそれは、本当にびっくり箱のような、場所だったのです。



いつも楽しいことを求めて動き回る彼女は、大きな瞳をきらきらさせてーーー彼の服の裾をシッカリと握りしめーーーこの館での生活を、存分に味わっていました。










「わあ……! ここって」

「ああ、懐かしいなーーーあの時のランブイエの森みたいだ」



楓の紋章の刻まれた古めかしい扉を開けると、そこには秋色いっぱいの、森が広がっていました。
足元はふかふかの枯れ葉が山と積り、踏む度に軽やかな音をたて、それは心地の良い感触がします。
散歩をしながらふたりはいつしか、かくれんぼのように木立に隠れあったり、木の葉を両手いっぱいに抱え、空へと撒き散らしたりしながら、森の恵みの空気に身体を浸していました。
マリナの笑う声は、まるで鈴の音のように軽やかに響き渡り、シャルルはその音で、頭の中でワルツを作曲し奏でていました。
歩いているとやがて森が切れ、目の前に切り立った崖があらわれました。

「……」

ふたりは無言でしたが、きっと同じことを考えていたでしょう。

かつてこんな崖から、危機を逃れるために抱きあって飛んだことを。

その時、眩しげに崖上を振り仰ぐシャルルの頬に、緊張が走りました。



「どうし……」

「走れ!」



鋭い声に驚いて崖をみると、何か黒々としたものが、圧倒的な気配をはなって立っていました。

どうやら生き物のようです。

黒々とたなびくたてがみは、嵐に荒れ狂う波のように渦巻き、その眼光は燃える炎のように真っ赤です。

馬のように見えましたが、あり得ない大きさと頭に生えた角と牙に、この世のものではないことがすぐに分かりました。

憤怒の渦巻くような視線をこちらに向け、ゆっくりと前足を振り上げるのが見えます。

いななきに似た恐ろしげな唸り声が、マリナの耳に届きます。



シャルルに腕を引かれ一目散に森に飛び込もうとしましたが、あっという間に崖を駆け下りてきたその生き物は、距離などものともせず、風のようにふたりに迫ります。


迷いはありませんでした。


シャルルはマリナを脇の木立に突き飛ばし、自分が的になるように、ひとりで走りだしたのです。

すぐその後、唸る風音を残し、あの生き物が真横を駆け抜ける気配がしました。

何が起こったのかわからなかったマリナは、目を白黒させて起き上がり、急いで道に戻ります。

はるか先でーーーその生き物とシャルルが対峙するのが見え、次の瞬間、小丘の向こうに姿を消しました。



全身がギュッと引き絞られるような感覚に、マリナは息が止まりそうになります。
しかし、力を振り絞って足を踏み出し、必死にその場所まで走りました。
心臓がやぶれてもかまわない、マリナは身体が壊れそうなほど、全力で走りました。
すると、丘を登ってくるシャルルが見えーーー

彼は、その場にがくりと膝をつきました。

「シャルルっ!」

マリナは叫んで夢中で彼に駆け寄り、その肩を抱き起こしました。
すると、ぼんやりと目をあけたシャルルが、上品な青灰の瞳でマリナを探すように視線を彷徨わせ、かすかにつぶやきました。
「ヤツは消えた……大丈夫だと思うが、しばらく、森に隠れた方が、いい。早く……、行け」

瞬間、マリナの脳裏に、かつての出来事が噴水のように吹き出しました。




『オレは君を愛せない。どうしても、愛せないんだ。だからもう、別れたい』




結婚すると決めた時も、自分一人を危険に晒すのはやめると約束したのに。

あたしを置いて、ひとりで危ないことをした。

『あの時』みたいに。



この時マリナは、過去と現在がごちゃまぜになり、ひどく混乱していました。



「マリナ……? 早」

「しない! あたしはあんたみたいなことしないっ、絶対、離れない!」

「? 何を言ってる、オレも後から行くから、とりあえず……」

「イヤっ、絶対いや!」



訝しく思ったシャルルは、顔をしかめながらゆっくりと身体を起こし、取り乱すマリナを観察していました。
なにか、おかしいです。
自分も動けないほどの怪我ではなかったので、シャルルは仕方なく、出来る限り急いでマリナと一緒にその場を離れ、森の岩陰に落ち着きました。

「どこも痛くない!?」

ヒッシとかじりつくようにそう聞くマリナを、シャルルは懐かしげに眺めました。
ああ、あの時は自分が、彼女にそう聞いていたな、と。


「ああ、大丈」

「しゃべっちゃダメ!」


いきなりガバリと口を塞がれ、彼はいまいましそうに眉をしかめました。
彼女にしてみれば、まさしく同じ状況で真っ赤な血を吐いた彼を目の当たりにしているのですから、思い出してしまうのも無理はありません。
鬱陶しそうにその手を払いのけながら、シャルルは自分の状態を詳しく確認しました。



辺りはしんと静まり返り、穏やかな森は、元通りの静寂を取り戻しています。



「あんた、またあたしを置いていこうとしたでしょ」



丸い膝を抱えながら、ポツリとそうこぼした彼女を見咎めて、少し苛立ちをにじませながら彼は言います。

「状況的にみて、あの場合は君を連れている方が、危険度が増すだけだった。能力的に考えて、オレ一人なら、どうとでもなるだろ」

打撲の様子を見ながら、ブラウスの着直し、彼は辺りを窺うように視線を巡らせました。
するといきなり、ガバリと顔をあげながら、マリナは叫びます。




「どうせ、どうせあたしなんか、足手まといよね!」



「何を言っている、誰もそんなこと言っていな……マリナ!!」






立ち上がり様木の葉を蹴って、マリナは森の中に駆け出しました。

痛む身体を引きずりながら、シャルルも小さな背中を見失うまいと、必死に後を追います。

















めちゃくちゃに森を走りながら、マリナは泣きました。



いつもそうだったのです、どれだけ彼を想っても、彼は何でも自分で決めて、ひとりで行動してしまう。
特に命にかかわるような大事な場面では、自分は守られてばかりです。
でも彼女もわかっていました、自分の無力さや、能力の無さを。
彼の役に立てる場面など、本当に限られた時にしかないことも。
歯がゆくて、悔しかったのです。
努力はしました、が、全てを兼ね備えた彼に追いつこうなどと、おこがましすぎました。
自分に腹が立って、やりきれません。

結局どんなに手を伸ばしても、彼には届かないのです。



そうするうちに、目の前にいきなり巨大な木が立ちはだかり、よく見るとその幹に錆びたドアの把手が見えました。

マリナは夢中でそれを回し、中へと飛び込みます。




ーーーそこは、一面の雪の世界でした。


愕然と佇むと、背後で扉の閉まる気配がし、慌てて振り返った時には、もうそのドアは消えていました。

仕方なくとぼとぼと雪の中をさまよいながら、マリナは泣き続けます。

泣けば泣くほど、雪が横殴りに強く降り、そんなマリナを責めるように白く染めていきます。

やがて手も足もかじかみ、マリナはとうとう足を止め、その場にうずくまりました。

次々こぼれる涙が、氷の粒になって、落ちていきます。




Drawing BY しば嬢



寒くて悲しくて、自分がもうどうしているかもわかりません。

ただ、シャルルが恋しくて、切なくて胸が張り裂けそうでした。

でもこんな自分は、やはり彼の隣にいるにはふさわしくない。

重苦しい絶望が、マリナを押しつぶします。





「~~~~~~……ナぁ!」





吹き荒ぶ雪煙に混じって、声がします。

夢……? 

朦朧と顔をあげると、こちらに向かってくる彼の姿がありました。

とっさに最後の力で立ち上がり、マリナは背を向けて、その場を逃げ出します。



「マリナ! どこへ行く、マリナ!!」



















「マリナー! どこだ! マリナぁ!!」

危険を顧みず、彼は森の中で力いっぱい叫びました。

やはり手負いの状態では彼女を追い切れず、シャルルはマリナを見失ってしまったのです。

「マリナぁ!!」

明らかに冷静さを失っている自分をわかってはいましたが、こうせずにはいられなかったのです。







そうするうちいきなりーーー闇が彼を包みました。






耳が痛いほどの静寂が舞い降り、彼を閉じ込めます。

文字通り、真っ暗闇です。

自分の指先すらも、わかりません。

彼はその場を動かず、状況を窺っていましたが、やがて自分が本当にそこに居るのかもわからないような気がしてきました。

感覚遮断、という言葉が浮かびましたが、それすらも頭から霧散していきます。

このままではバーティゴ(空間識失調)に陥るーーー、そう思ったその時です。







『あんたってわがままだわ。あたしと一緒に行くってあれほど約束したのに』





突然、耳元で彼女の声が響きました。



「っ!? マリナ、どこだ!」





『あたしには、一緒に行くだけの価値がなかったとでも言うの!?』




「マリナ! マリナどこに居る、マリナぁ!!」










【見えないのか】

それは声ではない声、音ではない音のように、彼を覆います。

【見えないのか】








『あたしに恋させてみなさいよ』








あの時、
すべてに絶望して、命を手放そうとしていた『あの時』、
木の葉に埋もれながら見上げた彼女の、少しの心配を隠した力強い笑顔が、


ふいにシャルルの脳裏に蘇りました。






するとーーー遠くに白い点が見え始めーーー彼は、闇の中で、自分の身体が形を成していくのを感じ、足を踏み出しました。

一歩一歩進む度、力が漲ってくるのがわかります、傷の痛みすら、気になりません。

白い点はどんどん近づき、やがてそれが雪景色であることがわかりました。

闇から飛び出すようにそこへ躍り出たシャルルは、力いっぱい、愛しい名前を呼びました。


「ーーーマリナあ!!」


少し先で、雪溜まりだと思っていたものが突然動き、それが彼女であることが見て取れました。

「マリナ! どこへ行く、マリナ!!」

明らかに自分から逃げている彼女の背中に、彼の胸は切りつけられたように痛みました。
それでも、彼女を失うわけにはいきません。
あの輝く命を失えない、たとえ嫌われても、ーーー自分を犠牲にしたとしても。

指先が、肩に、届きます。



「マリ、ナ!」

「………っ、はな……てっ」



この世界に来たばかりの彼ですら、もうかなりの体温を奪われています。
長いこと風雪に晒されていたらしいマリナは、髪も凍りつき顔色も蒼白で、声を出すことも動くことすら、ままならなくなっています。
暴れる彼女を抱きしめたその時、氷の壁に、またドアが現れーーーシャルルは迷いなくそこへ飛び込みました。
そこは質素な山小屋のようでしたが、暖炉には赤々と炎が燃え、手前の床には立派な漆黒の毛皮が、敷かれています。
氷のようなマリナをひとまず床に寝かせると、シャルルはすぐさま自分の服を脱ぎ、次いで溶けた雪でびしょ濡れの彼女の服を、脱がせようとしました。

や、や、だ

ふうっと意識を取り戻したマリナが、いやいやするように、彼から身体を離そうともがきます。

「ダメだマリナ、身体を暖めるんだ、早くしないと細胞の壊死が起こるっ」

「い、やぁ」

真っ白な彼女を傷つけないよう慎重に抱きしめながら、シャルルは唇を噛みました。
ふと、マントルピースの上に酒瓶が見え、急いでその封を切り口に含むと、真っ青に冷えたマリナの唇に、覆いかぶさりました。
焼けつくような水が喉を流れ落ち、マリナは驚いて動きを止めます。
やがてお腹から熱がわきあがり、凍えた身体が少しだけ緩むのを感じました。
するといきなり床に寝かされ、身体を押さえ付けられ、乱暴に洋服が取り去られていきます。



「やっ、やぁ!」



「もっと怒れよマリナ、ーーー怒れ!」




そう激しく言い放つシャルルの顔は炎に縁取られ、悲痛なほど哀しい影がいっぱいに広がり、苦しげに歪んだ青灰の瞳には、マリナへの想いがあふれていました。

それでも構わず彼は手を動かし続け、マリナの服をさっぱり取り去ってしまうと、敷かれた漆黒の毛皮をすばやくまとい、その中で氷のように冷えた身体を、強く抱きしめました。


「!」


瞬間、すさまじい冷感が脳天まで突き抜けます。

まるで氷を抱いているようでしたが、シャルルは構わず、一心に熱を分け与えました。
冷えきったマリナには、シャルルの体温はまるで灼熱のように感じましたが、どんどん、彼の体温を自分が奪っているのがわかり、慌てます。
また足手まといになっている自分が浮き彫りになって、みじめな気持ちでいっぱいになります。

「やめ、て、シャル、もう、やめて」

「オレが嫌でも、今は我慢しろ。暖房器具か何かだと思えばいい」

吐き捨てるようにそう言って、それでも彼は暖炉との距離を測りながら、効率良くマリナが温まるよう、震える身体を動かしました。

艶やかな漆黒の毛皮と、彼の真っ白い肌のコントラストがあまりにも美しくてーーーまるで聖霊の王様みたい。

こんな時でも、彼に夢中な自分が馬鹿みたいに思え、マリナは情けなくなりました。

自分を包む彼の大きな腕は、ますます強く熱く、彼女を温め続けます。

彼の胸の中は、身も心もとろけるような優しさに満ちていて、微塵の不安も感じない。

なんと安らげる場所なのでしょう。

毎日当たり前のようにいた場所なのに、失いそうになって初めて、その素晴らしさに気付く自分は、滑稽以外のなにものでもない。

マリナは震える唇を噛んで、後悔の海に溺れました。



「あんたの、迷惑に、なりたく、ない」

彼のすべてを感じながら、それでも失わなければならない決別を込めてつぶやいたその時、温かい大粒の涙が、




”シャルルの目から”こぼれました。




「無理だーーー」




その時、震えるような透明なテノールが、耳元で響きます。

「もう限界だ、無理だ、マリナ。オレは、約束を守れない」

マリナは温まりかけた身体が、また急速に冷えるのを感じました。
その震える暗い声は、かつて魂を吐き出すように別れを切り出した時の声と、そっくりだったからです。

ーーー別れたいーーー

心が、ズタズタに切り裂かれるような気がしました。

息をするのも忘れるほど、目の前が真っ暗になりました。

覚悟はしていたのに、彼と離れることがこんなにも辛いものだったとは、想像もできませんでした。

冷えた自分より、もっと冷えて見えたシャルルの綺麗な顔は暗く沈み、感情を閉ざして生きていた頃の彼の面影が、強く浮かんでいます。

ぴったりと合わさっているはずの肌が、まるで指間からこぼれる砂のように、儚く感じます。

シャルルはそれでも、自分の熱を与えるべく、マリナを抱きしめながらきっぱりと言いました。



「ーーーオレは、どんな時でも、君の命を優先する。
エゴイストと思われてもいい、ああ、オレは元からそうだしな」



自嘲的に笑いながら、彼はきつく瞳を閉じます。
ーーーてっきり、もう一緒にいることはできない、と言われると思っていたマリナは、目を見開きました。



「プロポーズした時、マリナ、言っただろ、”危険が迫った時、君だけ逃がそうとしたら、その場で離婚だ”って……。

無理だ、オレには出来ない。

オレはどんな時でも、君を、君の命を優先するよ。

だから、契約不履行で、君の夫は解雇だ」



まるで冗談を言っているようにも聞こえましたが、彼のあまりに堅く厳しい表情は、とてもそうは見えませんでした。
シャルルは、かつてマリナの言った言葉を、忠実に守ろうと自分に誓っていたのです。
彼の温かい胸の中で、マリナはどきどきしながら、そんな彼をじっと見つめていました。

「生きているなら、たとえそばにいなくてもいい。オレは、恐ろしいんだ。君を失った後の、独りの自分が」

その時、マリナの脳裏で何かがぴたりと合うような感覚がしました。
今までもどかしくて、その正体がつかめず苛立っていたものの、姿が見えたのです。
過去、何度も何度も傷つき倒れてきた彼の姿を見て、いつの間にか心に刻まれていたその恐怖が、苛立つ原因だったのです。

どうしてあんなにも約束したかったのか。

それは、ひとりになることが怖かったから。

かじかむ身体で精一杯息を吸い、ガチガチと今にも鳴り出しそうな歯の根を落ち着かせ、ゆっくりと、声を押し出しました。



「あ、あたしだって、同じよ……っ

あんたが死ぬの、なんか、見たくない。

一息でも、いいから、あんたより先に死にたい……

ひ、ひとりぼっちになるのは、いやなのよっ」



かすれる声で精一杯吐き出したその言葉を聞いて、シャルルはすうっと瞳をすがめて鼻白みます。





「優しくないな、”あなたをちゃんと看取ってから逝くわよ”、だろう、日本人だったら」

「はぁ? 何、勝手なこと言ってるのよ。あたしは、あんたより、先に、死ぬのっ」

「オレを悲しませてもいいっていうのか?」

「お生憎様、もう死んじゃってるから、わかんないもーん!」

「ああそうか、じゃあ君を想って泣き暮らし、みじめに痩せ細って後を追うよ。だがあの世で再会しても、骨と皮だらけでわからないかもなっ」

「そ、それはダメー!」





お互いにきつく抱き合い、頬と頬を寄せて、もう二度と離さないよう、ふたりはぬくもりを確かめ合います。





「やだ、やだよ、あんたと、別れたく、ない……っ。残すのも、残されるのも、いやよ」


「オレもだよーーー死ぬのが、怖い」





死を恐れたことなどない。
かつての彼の口から聞いた言葉ですが、今はなんと遠い世界のことなのでしょう。
生を惜しむことは、それは人であるという証のようなものです。
そして人は、誰かと寄り添うから、人になれるのでしょう。
愛を見つけた彼は、しなやかに変わりました。
いいえ、変わったーーーというのではなく、”選んだ”のです。
彼女と、人生を共に歩むことを。



「わがままね、あたしたち」

「困ったエゴイストカップルだ」



ふたりはため息をつきながら、嬉しそうに言います。




「オレは絶対に君を離さない。一緒にいよう。
ピンチになったら、その時はその時だ」




精悍な頬に頼もしげな笑顔を浮かべて、シャルルは鮮やかに微笑みました。

昔の彼からは想像もできないようなあたたかい表情に、マリナはまた恋におちました。

恋?




「ねえマリナ。


オレは、君に、恋させてる……?」




ふいにひっそりとそう聞いたシャルルは、少し不安げだけど、怖いほど真剣な光がいっぱいに瞳を彩っていました。

上品で物憂げで、優美を体現したようなその目の中に、確かに自分がいます。

ぽうっとしてとろけそうな顔をしてーーーこれはまさに、百聞は一見にしかず、です。

それでも聞いてくるシャルルの繊細さに、マリナはにやけずにはいられませんでした。








「ううん」

「……っ」

「早とちりしないでよ、ちょっと、ちがうだけ」







唇を近づけて、温かさを分け合うように優しくキスしながら、マリナはうっとりと彼の瞳に告白します。










「愛を、させてくれてるわ」






















漆黒の毛皮にくるまったふたりは、いつまでも抱き合い、ーーーそうしてあたたかい愛に満たされて、眠り続けました。



続く










★萌え萌えキュンキュンな、ンもぉおおお( ;∀;)たまらなくかわうい泣きマリナちゃんを描いてくれたのは、ACT.1でもお世話になりました、しば嬢でございます~~~///( ゚Д゚ノノ☆パチパチパチパチ

あの、恋しちゃってどうしようもない哀愁や切なさがすごくお顔に出ていて、見た瞬間もう速攻泣けたワタシは、かなりヤラれています!!! 
カワイイよぉ、抱きしめていい子いい子してやりてぇよ~マリナちゃ~ん!!!\(;∀;)/
毎回、心というか魂の入った!素敵マリナちゃんを魅せてくれて、ありがとうしばさん!! ⇒しばさんのブログ♪
大感謝でございます~~~。・゚・(ノ∀`)・゚・。 感情移入度ハンパねえ!!!
シャルル、あんまマリナちゃんいぢめんなよ~~~!(笑)




そしてもうファンタジー展開(というかエロ展開?爆笑)も4幕になりましたがwww
まだ飽きられてないかなwwwww(^=^;デヘヘ

王道展開、イッてみました♪ いろいろベタですみませんwwwww m(_ _*)m

大好きなトルソモチーフですエヘヘ(#^.^#) そんでもって、結婚を決めた時~は(笑)自作のラヴィアンローズから(*ノωノ) イヤン
てか、自分で書いてて『死ぬのが怖いよ……』で、ダーっと泣いたぷるは、ええもう病気です_| ̄|○
でもでも、……幸せやった~~~~~~( ;∀;)


名誉より、死は選ばんといてくれよ、シャルルよぉぅ……




拍手いただけるとガンバレます( ´∀`)

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

好きです、この章、大好きですー(。・ω・。)

ぷるぷる さんのコメント...

おおぅ///(>_< *)
そのお言葉は最大級のご馳走ですよぉおおおー!!!
読んでくれてアザマス匿名さーん(゚´Д`゚)