2013/02/11

記憶の迷宮でだきしめて!4


記憶の迷宮でだきしめて! 4







なんだかすごく悲しい夢を見て、目が覚めた。
あとからあとから涙がこぼれてきて、それを拭おうと手を上げようとすると、温かい何かを感じた。



誰かに、手を握られてる。

強く、優しく。







不思議に思って、寄り添うように並べられた隣りのベッドを見ると、

落馬した時以上の包帯を巻かれたシャルルが、

青灰色の瞳をそれは穏やかに美しく輝かせながら、

あたしをじいっと見つめていた。



ーーーここが病院だってことも、シャルルもあたしも無事だったってことも、わかった。

だんだんと意識がはっきりしてきて、あたしはドキンドキンと高まる鼓動に急かされるようにしながら上半身を起こし、そんなシャルルと見つめ合ったまま、おずおずと口を開いたの。

「あ、あのねっ、ほんとは螺旋階段から落ちたのは、」

「ーーー正確に言うと、自分の意志で飛び降りた、だ」

ふっと瞳をふせ、気だるげに首をそびやかし、皮肉げにそしてちょっと自嘲的に微笑みながら、シャルルはそう、つぶやいた。





そして、水晶のような輝きを放ちながら現れた青灰の瞳を仄かににじませ、

花が開くような笑顔を、その天使の頬いっぱいに飾ったのーーー。






「ただいま、マリナ」






あたしは……あたしは、声も出せずに、シャルルに飛びついた。

点滴の針がぶちっと引っこ抜け血が吹き出したって、色々ついてた機械がビービー悲鳴をあげたって、骨折したシャルルが痛みに耐えきれずうめいたって、かまうもんですか!



ああ、ああ神さまーーーありがとう、ありがとう!

シャルルを あたしに返してくれて、        ありがとう!!



あたしのほっぺからポトポトこぼれる涙を浴びながら、痛みに顔を歪めて、それでもあたしに優しい微笑みを注いでくれるシャルル。
大好きな繊細な指先が、前と変わらない温もりをもって、そっとそっと髪を撫でてくれる。
シャルルだ、あたしのシャルルだっ!
まるで100年も会わなかったように、シャルルはやるせなく瞳を細め、瞬きすら惜しいというふうにあたしを見つめ続け、やがてあたしの頭の後ろに腕を回すと、強く自分に引きつけた。
久しぶりに合わせた唇は、涙のしょっぱさと、すれ違っていた時間の苦さと、それを乗り越えたカタルシスで酔うほどの熱い甘さが入り混じり、どこまでもあたしたちを魅了する。
荒々しく時に繊細に、とろけるほどにあたしを翻弄するシャルルに溺れそうになりながら、どこまでもこのキスにのめりこんでいるとーーー突然べりっとひっぺがされ、みっともなくもあたしはタコちゅーの唇のまま、ジタバタと手足をばたつかせた。
そんなあたしが可笑しかったのか、シャルルは痛みにひきつりながら、天を仰いで肩を震わせていたのっ、うわーん、はーなーせー!
あたしを引き剥がした看護師さんは、シャルルがいかに重傷かをお説教し、大人しくしないと病室を分けるとがなり立てたのっ。
冗談はよしこさん! やっと元に戻ったのにっ。
シャルルは片目をすがめながらなんとか笑いをおさめ、あたしをおとなしくさせること、治療にきちんと専念することを約束して、場をおさめてくれた。
今度は、あたしを病室から追い出さなかったのよっ、にんまり。
しぶしぶといった感じだったけど、看護師さんは点滴を直したり等々、処置をしてくれて、くれぐれも安静! と釘をさして、病室を出て行った。
その間もあたしたちは……ずっと離さず、手を繋いでた。
身体のあちこちがズキズキと痛んだけど、幸せで幸せで……ほんとにつなぎ止めてもらわないと、プッカリ浮き上がりそうだったんだもの。

「やれやれ、君のそばにいると、身体がいくつあっても足りないな」

やつれた頬に疲れた笑みをにじませ、シャルルは長く深い吐息をついた。
実際シャルルは、本当に重症だったの。
よく飛び降り自殺を企てて、肝心の飛んだ方は生き残って、運悪くクッションになっちゃった通りがかりの人が死んじゃった、とか聞くでしょ。
今回は、シャルルの超人的な運動神経でした受け身と、冬で厚着してたのも幸いして、なんとかこの程度で済んだらしいの。
あたしは心臓が凍りついちゃうくらいゾオォッとして、真剣にシャルルに平謝りした。
「まったく……よく落ちる子だね」
シャルルはそんなあたしを優しく抱きしめて、まぶたにキスしてくれた。
このデカ頭、本当に削ろうかってシャレにならないような冗談を言いながら。ゾクッ。
「どこで思い出したの?」
「思い出した、というより、繋がった、といった表現が正しいな。
君を受け止めて大理石に叩きつけられた時、不意に天井のサラマンダーのレリーフが、目に飛び込んできた。
身体が壊れそうなほどの激痛を感じているのに、手に握ったもののおかげで、なぜかとても充足感を感じているんだ……その瞬間、全てがよどみなく流れた」
「手に握った?」
「今は君、だね、デカ頭のマリナちゃん。その前は」
「鍵よね。松本由香里からぶんどってくれた!」
あたしが勢い込んで言うと、シャルルはふっと淡く笑ってあたしの頬をその手で包みこみ、自分の頬をそっと合わせた。

「初めてだった。他人のために命すら省みず、衝動的に動いたことが。

当時のあの瞬間オレを支配していたのは、鍵を手にして喜ぶ君の笑顔だけだった。

ただそれだけのために、オレはあの手すりを乗り越えた、それが見たいが為だけに。

そしてこの孤独なオレが、君が本当に求める物を贈ることができる、最初で最後のチャンスだと思ったんだ。

ーーー君は日本に帰る……オレとは違う世界に住む、異邦人だと思っていたから。

だからせめて、君の最高の笑顔だけは、独占したかった」

ゆっくりゆっくり、喋るのがもったいないみたいに、シャルルは頬を離しながら、かつての想いを優しく語ってくれた。
「ところがどうだ、駆け寄った君は鍵ではなく、この手を」
視線を自分の手に落として、シャルルは噛みしめるように誇らしげに言ったの。
「この手の方を取って、大粒の涙を流しながらオレにありがとう、と……。
だからこの手だけは、特別だった。
オレとマリナが、初めて繋がれたと感じた大切な場所だからーーー。
そして、この手に握ったものが、冷えたオレを揺さぶり起こし、激動の運命へと押し流した」
シャルルのあまりの熱っぽさにのまれたように呆けていると、突然、キラリと射抜くような熱い視線を注がれ、あたしはドッキンと胸が高鳴った。

「つまり、恋だ」

低く囁いて、シャルルは再び狂おしく唇を重ねる。
熱くて甘くて、溶けてしまいそうなキスをくれる。
でも正直、あたしは驚いてた。
『ほら、プレゼントだ』
まさかあのアクション劇の裏で、こんなにも熱い感情が燃え上がっていたなんて。
確かに飛んでくれたあの時、シャルルのために何でもしようって誓ったけど、それは友達としての感謝の域を出ていなかった。
だけどシャルルは、こんなに早くから、あたしを心に住まわせてくれていたんだ。
軽い感動を覚えながら、ちょっと涙ぐんでシャルルの胸に顔を埋めていると、わななくような浅い吐息を感じ、あたしは急いで顔を上げた。
だってシャルルの具合が悪くなったのかと思ったんだもの。
シャルルは片手で両目を覆い、苦しそうに首を巡らせながら、喘ぐように言葉を紡いだ。







「君を、失うかと思ったんだ」







空調の音に消え入りそうな声が、微かに流れる。

「君が愛しくて、愛しすぎて……おかしくなりそうなんだよ……マリナ。

もし、君がオレの前から消えてしまったら、オレはどう生きていけばいい、呼吸することすら無意味に感じるんだ……!
今回、外傷性の血腫が事の引き金になったことは明らかだが、生活史全般は覚えていたことから、おそらく心的ストレスからくる、解離性部分健忘を引き起こしたんだ。
馬からふり落とされた時、君を失うのではという恐怖と、これで楽になれるという思いがせめぎ合い、一時的に意識を抑圧したんだ」

シャルルは早口でそう言い切り、それについていけずにあたしが内容を反芻してると、なんか引っかかった。

ーーーーーーん? ラクになれる!?

てことはよ?


・あたし死ぬ←もう逢えないけど、余計な心配しなくて済む。
・自分死ぬ←もう逢えないけど、あたしに囚われることも、余計な心配もしなくて済む。


てこと!? こここここ、怖っ!!
何考えてんのよこいつ!

目をまん丸にして硬直してると、シャルルはなんとも形容しがたい、まるで死を甘受したような透徹さを浮かべて、真正面からあたしを見据えてきた。
心の奥まで見透かされるような、ううん、それすら通り越した、この世のものとは思えない透明過ぎる眼差しが、あたしの胸をしめつける。
いつも近くにいたいと願い、それに力を尽くしそして実際近くにいるのに、彼の心はどうしていつまでたっても憩えないのか。
改めてあたしは、シャルルって男との付き合いの難しさを、砂を噛む思いで考えていた。
昔のあたしなら、とっくにオシリまくってる。
めんどくさいのやだし、綺麗でふわふわドキドキする恋愛の方がずっと楽だし楽しいもの! 



「告白するよ……君に会う前の自分に戻れたらと思ったことも、1度や2度じゃない。

それがどれだけ空虚で孤独か、わかりきっているのにも関わらずだ。

しかし少なくとも平穏と静寂はあった。

苦しい、君を得たはずなのに、この苦しみは増す一方だ。

まさに君はファムファタルだよ、オレを狂わせ滅ぼす……魔性の女性だ」



最後は片手で顔を覆い、タチの悪い風邪にうなされるみたいに、シャルルは肩で大きく息をついた。
ちょ、チョット待ってよ。
魔性の女って、女の子なら誰でも憧れちゃうようなドキドキワードだけど、言われたこっちはちっともピンとこないわよ。
なんか疫病神みたいじゃないのっ。
釈然としないあたしがちょっとむくれていると、シャルルはこっちがドキッとしちゃうような妖しい微笑みを片頬に浮かべ、熱い視線をゆっくりとあたしに注いだ。
切なくて、もどかしくてどうしようもない、熱病にかかったみたいな狂おしい眼差しは、遠い昔にテレビのナントカ劇場でみた古い洋画の、恋に患う狂人を思わせる危うさを感じたの。
そんな様を目の当たりにして、あたしはコクンと息をのみ、彼のとても深い闇に思いをはせた。

自分を見失うほどのあたしへの思慕、そんなとてつもなく大きなものと、あたしはこの先向き合って、そして受け止めていけるんだろうか。





「シャルル、苦しい?」

「ああ」

「つらい?」

「……ああ」

「じゃあ、別れる?」

「ーーーっ」

「あたしはいやよ」





凍りついたシャルル。
すごい、ほんとに瞬間冷凍しちゃったみたいな……見事に、バナナで釘が打てます状態だわ。
い、息してるわよね?
目を見開いたままオレンジ色の唇を引き結び、微動だにしないシャルルをツンツンとつつくと、彼はハッと意識を取り戻したみたいに、目の焦点をさまよわせながらうつむいて、自分を強く抱きしめた。
そしてなんと見る間に青ざめていって、しまいには紙みたいに真っ白になっちゃった!
げ!!
「じょ、じょーだんよシャルルっ、それにあたしはいやよってすぐに否定したでしょ!? ちょ、しっかりしてちょうだいよっ」
あたしはそんなシャルルに慌てて飛びつき、ひやりとした手に血を通わそうと必死にゴシゴシこすった。

「ほら、ね。オレを生かすも殺すも、もう君次第なんだよ……マリナ。
ファムファタルに出会ったオレのようなバカは、のめり込んで、いつか破滅するのさ」

脂汗をにじませて、あたしの腕の中で、シャルルは死の床につく病人のように細い息を切れ切れに吐いた。

「君の愛を焦がれていた時は、それはそれで苦しくて耐え難かった。

だが、いざこの腕に抱くと、あまりの幸福に全てが怖ろしくなった。

二度とあの空虚な孤独に戻りたくないと叫ぶオレが、内側を食い破らんばかりに荒れ狂う。

それをなだめるのに必死で、今を守る為だけに、ただ必死で……。

愛とはまるで、剃刀のように心を引き裂く凶器で、無限の飢えをオレに架せ、痛めつけるーーー!」

最後の方は、ほとんど悲痛な叫び声のように……血を吐くように言うシャルル。
愛されずに育ってしまったこの身体は、それと同じ年月痛んで孤独に震えて、凍りついてきた。
そういえば、こんな話を聞いたことがある。
南極じゃ例え5度の水だって、お湯みたいに熱く感じるらしい。だってまわりが、マイナス30度とかの超低温の世界だから。
きっとシャルルは、それと同じように、生きてきたんだ。
だからちょっとずつ、そっとそっとその温度に慣らしてあげなきゃ、たぶんあの有名なテレビCMの凍ったバラみたいに、あっさりバラバラになっちゃうのかもしれない。
自分の記憶すら封印してしまう繊細なシャルルに、あたしは、こんなガサツなあたしは、果たして彼を壊さず、愛を返してあげることができるんだろうか?
目の前のシャルルが、バラバラに崩れるのを想像しちゃって、あたしは思わず震え上がった。




でも、やる。




あたしが最後に自分で選んだのは、この手だもの。

どんだけ傷つけあって、崩れそうになっても、あたしが選んだ愛を貫くしかないの。

あたしはあたしのベストを尽くす!

「昔、あんた、愛とは魂の試練だって、言ってたわね。
いまだにそこブレないのすごいと思うけど、あんたいつまで試練修行してるわけ? あんたってサド装ってるけど、絶対マゾでしょ、ぜーったいそうよっ」
あたしの膝の上でのたうつシャルルなんか無視で、あたしは続けた。
「あたしあんたと付き合ってから、一つ気にくわなかったことがあったのよね、実は」
言い放つと、シャルルの肩がピクリと動いたのがわかった。
よしよし、ちゃんと聞いてるわね。
「なんていうかあんたってさ、恋しちゃってルンルン気分が足りなすぎんのよっ」
「……なんだって?」
シャルルは聞いたことのない言葉でも聞くように、(まあほんとに実際そうなんだろうけど)不審そうに目をすがめ、ゆっくりと顔をこっちに向けた。
あたしはしめたとばかりに、あの大切な手を取ってぐいと引っ張り上げて、シャルルをそっと抱き起こしながら、ずっと気になってたことを言ったの。
「あんたってほんと怖がりやよね。
愛してる、なんて言うくせにいつかなくすんじゃないかってビクビクしてて、夢から覚めないようにそーっとキスして。なんかもう遠慮されてるみたいで、あたし物足りないのよっ」
シャルルの頭の上に、いっぱいハテナが浮かんでるのわかっちゃったんだけど、あたしはかまわず続けた。
「そんなバカみたいに浮かれろって言ってるんじゃないんだけど、なんかもう毎日楽しくて仕方ないぜっ、ハッピーで周りが見えないぜ、世界はバラ色!オレとマリナのふたりきりぃ!! みたいなさ、わくわくドキドキぃ! って感じがもっとこうっ、欲しいのよね、わかる!? キュンキュンしちゃって、こうニヤニヤしちゃって床で転げまわっちゃうようなさ~! だからっ、ホラ、ね……ハハ」
ついついネームきってるノリで叫んじゃったあたしをジト目で見ながら、シャルルはひとつ咳払いをして、オレの愛し方が足りなかった? と小さくつぶやいたの。
「ちがうわよっ、そうじゃなくて! もっと楽しめないかって言ってるのっ。
あんた、あたしといて楽しくないのかしらって、たまに落ち込んでたのよっ。
だいたい恋して浮かれてる時なんて、それだけでいっぱいで、無くしたときのことまで頭まわらないわよ!
だから、あたしの魅力が足りないんだわって」
「そんなことない!」
しょげたあたしの目の前ではじけるように叫んだシャルルは、次の瞬間、少年みたいにかあっと頬を桜色に染めて、慌てて横を向き片腕で自分の顔を隠した。
うわっ、可愛い!
「君を、前にすると、今でも胸が苦しくなって、……どうしていいか、わからなくなるんだ」
こんな殊勝なこと頬染めて言うサド顔フランス人に、あたしはさんざん夜泣かされてるんだけど、という話は今は脇においといて……、シャルルは、いつものヴェールを捨て去り、思春期の男の子みたいに居心地悪そうにしていた。
「ねえシャルル、考えるなとは言わないけど、せめて目の前のあたし最優先で、思考回路組立なおしてくんないかしら。
じゃなきゃ、せっかく楽しい今を、みすみす逃しちゃうわよ。
このあったかさを失って生きること想像しながら、今のあたしを抱いてほしくない。
このまますれ違っていたら、いつか本当に無くしてしまうかもしれないわよ。
あんたは、それを知らなかったあの頃に……本当に、戻りたいの?」
おそるおそる問いかけると、シャルルはあたしと初めて繋がれた大切な手を取って、胸が裂かれるほどの悲壮な声を絞り出した。



「ーーーっ、いやだ。もう、知ってしまったんだ!」



あたしはその痛みを慰めるように、シャルルの大きな手を精いっぱい胸に抱きしめた。
「そうよ! もう試練は終わり。自分を試すのなんかもうやめて、あれこれ考えずにとことん味わいなさいよ! どうせもう離れらんないんだからっ。
もーいい、もうたくさんお腹いっぱい! って飽きて放り出すくらい、いっしょにいましょうよ。
いいじゃない、その時が来たらきたで、その時苦しめば!
あんたの愛はむずかしいわね。
でも大丈夫、あんたの難しいところ、あたしが簡単にしてあげるから!」
いたるところを骨折してるにも関わらず、シャルルは深く深くあたしを抱きしめながら、何度も何度も、好きなんだ、大好きなんだマリナ……って、ささやき続けた。

そう、これなのよ。
身体の芯までジーンてしびれるハグ。
あたしは改めて、シャルルが戻ってきたことを噛みしめていた。

おかえり、おかえりシャルル。

「あんたといっしょにいるようになって、あたしちょっとわかったのよ。
愛って、甘っちょろくないんだけど、以外と簡単だって。
最近じゃ、お揃いの帽子作ってくれたこと、すっごく嬉しかったの、ジーンときちゃった!
あと、煮詰まってるとき乗馬さそってくれたこと、あたしの心配してくれたこと、ちょっと怖かったけどヤキモチやいてくれたこと、命をかけて助けてくれたこと。
ただいまマリナって、ーーーちゃんと帰ってきてくれたこと」
あたしはシャルルと向き合い、そのほっぺを両手で包みこんで、静かに揺らめく青灰の瞳に語りかけた。

「わかるシャルル? 

あんた無意識に愛注ぎまくってるのよ。

そんなこと普通にやるあんたに、ドキドキしてるのがあたし。

運命の、なんて大それたもんじゃない。

あんたに恋してる、それが生身のあたし」

シャルル、あたしを見て。
頼りないかもしれない、わがままもの知らず教養なし、美女でもないしスタイルも悪い。
だけどあんたを愛してるのよ。
それだけは、誰にも負けないからっ。
なくす怖さはあんたと同じ。
だからたまにグズグズ泣いちゃうけど、それを恐れて縮こまってちゃ、幸せなんかやってこない。
だからあんたを想うのよ。ひとりじゃだめでもふたりなら強くなれるから。
転んでもぶつかっても、ただひとつ自慢できるのは、あんたへのこの気持ちだけ。
それはあんたが、あたしを強く支えてくれてるからなのよ。
あんたがくれる愛であたしが生きてる、活かされてる。
それがあたしだって、いつか気づいて……お願い、シャルル。

思わず涙がこぼれそうになって、あたしは慌てて顔を上げ、景気よく言ってやったの。



「あたし、ファムファタルなんて降りるわよ!」



唐突なその宣言に、シャルルは、唖然として目を見開いた。
だいたいそんな考えにとりつかれてるから、ロクな結果になんないのよ。
ヘンなこだわりが、自分の首絞めてるってことも、コイツは知るべきよ! そう思わない!?
「ガラじゃないし、第一あたしフランス人じゃないしっ。いつまでも一線引かれて、崇め奉られるのなんてゴメンよ。
そんなの意気地なし男の、ひとりよがりの詭弁よっ」

そん時のシャルルの顔ったら……!

ほんとに絵文字の(゚◇゚)ガーンみたいな顔しちゃって、アホっぽいったらないじゃないっ、あたしを苦しめたこと、ちょっとは思い知るがいいわよ、わっはっは!
たまりにたまった鬱憤と、安心してタガがはずれちゃったのか、あたしは口から飛び出る言葉が止められなかったの。
「個人主義だかなんだか知らないけど、あんたらフランス人だって、たいがい勝手過ぎるわ!
フランス流もだいぶ慣れてきたからね、いいじゃない、NONから始まる会話してやろーじゃないのっ。
じゅてーむ、あもーれ、そんな君のそのままな所が好きだよも結構だけどねっ、こっちはいつも置いてけぼりよっ。
あたしを思って苦しむのも狂うのもあんたの勝手だけど、当のあたしがのけ者にされてるってこと、忘れんな!
あたしはあんたのそばにいるじゃない……苦しいなら、あたしにそのまま言えばいいじゃない……っ」
一気にまくし立てるあたしをそのままにしてくれ、シャルルはじっと耳を傾けていてくれた。


「こらシャルル・ドゥ・アルディ!


男らしく往生しろっ。

あんたはあたしのものなんだからっ。

だいたいあたしが好きすぎてって、じゃあ、あんたのこと想ってるあたしは……っ、どうすりゃいいのよっ。

勝手に、ック、あたしのこと……わ、忘れるとか……っ、ウック、ゆ、許さないんだからね……!」





ぼたぼたこぼれる涙を長い指先でぬぐい取って、シャルルはあたしのデカ頭を、それは宝物のように抱き寄せて、ずっとずっと、優しく髪を撫でてくれた。
「ーーー最高の幸せを、オレのすべてを、無くすのが、ただ怖ろしかったんだ」
「それと同じ思いっ、ヒッく、まさにあたしがしたんだって忘れんなっ、大バカシャルル……怖くて淋しくて、あたしご飯ノド通らなかったのよっ。おかげで痩せちゃったんだから、責任とってよねっ」
「……何キロ?」
ーーーは?
「何キロ落ちたの?」
うっ。
いいムードで泣きじゃくってる彼女に、なんつー無慈悲なことを無神経に聞くんだコイツは!
ううー、ウソついても、アルディに戻りゃデータがあるから誤魔化せないし!
あたしはずずっと鼻を吸って涙を引っこめながら、ボツリと白状した。
「な、……700、……グ、ラム」
「ハ!」
シャルルは片手で目を覆って、天を仰いで大笑い!
「だ、だってあんたの記憶戻すために、あれやこれや奔走しっぱなしで……っ、腹が減ってはケンカはできぬって言うじゃない!」
「戦(いくさ)、だろ。
ああ、悪かった、君の貴重な700グラムを減らしてしまって! 
恋人の記憶喪失という程度のシチュエーションダイエットでは、君みたいな神経のズ太いタイプには向かないんだね、良いリサーチになったよ」
たいそう気分を害したみたいに意地悪く言って、シャルルはあたしの鼻先に、特大のフンをひっかけた。
むっかーっ! なによその言いぐさっ。
カチンときて言い返してやろうと大口開けたとき、いきなりピッタリ、唇をふさがれた。
イジワルが一転、まるで飢えた狼みたいな激しい口づけをくれながら、シャルルはキスの合間に切なく囁いた。


「ーーーゴメン……本当に、ごめんよ、マリナ。


いろいろひどいことして、……すまなかった……」


震える吐息に紛れて、そう苦々しげに告白したシャルル。

きっと、自分が自分じゃなかったあの時間は、忘れない彼の脳内で、いつまでも己を責め続けるんだろう……あたしにしたことを。

でも、それもいつか思い出になって、きっと笑える時がくる。
あの時は怖かったんだからって、笑い飛ばしましょうね、シャルル。
お互いに離れるのが惜しくて、あたしたちはいつまでも互いの唇を味わっていた。
やがて傷が痛むのか、シャルルはちょっと頬をひきつらせ、苦しげに喘いだ。
あたしはそっと身体を離し、彼をベッドへと横にならせながら、かいがいしく点滴の管をなおしたりしてあげたの。
シャルルは億劫そうに、長い吐息をつくと、まるですんごく憎たらしいヤツがいるかのごとくの視線を、天井へと向けた。
「しかしーーー思い出せないというものは辛いものだね、もう二度とごめんだ。
凡人は、いつもあんな思いをしているのかい?
まったく気の毒だね、凡人代表のマリナちゃん」
「ふん、あんただってどーせおじいちゃんになったら、そうなっちゃうわよっ」
「フン、お生憎様。アルツハイマーはもう克服済みだ。ボケや老衰の解明もできてる」
げっ!
「オレは美しいまま、有終の美を遂げるのさーーーもちろん、君といっしょにね」
シャルルは首だけこっちに向けながら、透明な笑みを浮かべ、あたしの指を自分の細く繊細な指先でからめとった。
クセのない白金の髪がサラサラとこぼれ、そんな彼の輪郭を華やかに彩る。
久しぶりにじっくりそのスーパーな美貌を見ちゃって、あたしはドギマギしてしまった。
わーん、いつになったら慣れるのよぉ! このままじゃ確実にあんたよか先にオダブツしそうよっ。
贅沢な悩みかもしれないけど、相方の美貌でショック死なんて、シャレになんない!
あたしが硬直してると、シャルルは嬉しそうにフフと小さく笑って、あたしのほっぺをブニっとつまんだ。
「いい加減生き飽きて、この世をマリナちゃんと堪能してーーー猫又マリナを連れて行かないと、子孫が迷惑しそうだからな」
だれがネコマタだっ、失礼な!
ムカッ腹で折れた肋骨あたりをペチンとやってやると、鋭くうめいたシャルルが、暴力反対とつぶやいて、脂汗を流した。
でもそのあと、そっとそっと包帯の上を撫で……あたしはこの数週間見てた悪い夢を、思い返していた。

いつか、もしかしたらいつか、

あたしたちの道が別れることになっても、キライになったままでいたくない。

包帯の白い色が、目に突き刺さるほど眩しく感じて、同時にそれはシャルルの心の色のような気がしてならなかった。
真っ白いこの下に、深い深い傷を隠して、シャルルはこうして、あたしの隣に立ち続けるのかしら。
これ以上シャルルを傷つけないためにも、あたしはあたしをちゃんと守らなきゃ。

「いっしょに、やってこうね。ね、シャルル」

あたしは寝転んでシャルルに寄り添いながら、白く厚い包帯にキスした。
しばらくの沈黙の後、静かな病室に透明なテノールが響く。




「オレ、危ないぜ?」




好きだからどうしても手放せない。

でも近くにいると、自分がおかしくなる。

シャルルの本当に真剣な不安が溢れ出て、彼の血の通った気持ちを感じて、あたしはかえって嬉しくなったの。
昔は一人で殻に閉じこもったような超然としたシャルルで、ぜんぜん身近に感じなかった。
だけどだんだん近くなる。
あたしたちは、あたしたちなりの愛で、ゆっくり歩いていけばいいから。


「愛って」

「ん?」

「愛ってさ、たぶん通りすぎて最後に振り返ったとき、どんなものかわかるのかも。
どんな花が咲くかわからない、種みたいな」

シャルルの横で寝そべりながら、見えないけど、きっとあたしたちの上で輝いてるお日様に、手を伸ばす。
あたしたちはそれぞれ種で、それぞれの厳しい冬をじっと耐えて、春のお日様を待ってるの。
いつか芽を出して、出会ってまた新しい種を作るのよ。



「ねえシャルル! たくさん種埋めましょうよ。
これからケンカだって、生死の境目だって、いろんなピンチだってきっとあるわ。
だけどそのたんびに、力を合わせて種を埋めていきましょうよ。
それで最後ふたりでせーの、で振り返った時どんな風景になってるか、楽しみじゃない?
あたしは、そんなお楽しみな愛がいいな。
楽しそうじゃない!?
ねえシャルル、ど……っ、!」



掲げた腕をぐいと引き戻され、ちょっと強引に顔を傾けられ、シャルルはキスをくれた。
そして、とてもとても真っ直ぐで真剣なくらい怖い光をその瞳に浮かべながら、あたしをのぞきこむ。
「オレが、共同作業向きじゃないの」
「モチロン知ってるわよっ。どっちかって言うとあたしもそうだし」
「ーーー、だね。一番難しそうな事業だな」
「そうよ、そんな簡単なことじゃないわ。だからやりがいもあるってもんでしょ。挑戦するアルディの血が騒がない!?」
あっはっはってあたしが笑ってると、シャルルはびっくりしたみたいに目を見開いて、そんなあたしをしばらく見てたんだけど、やがて誰もがうっとりとするような大天使みたいな微笑みを浮かべ、そっと瞳をふせた。
ああシャルルは、なんて透明で綺麗なんだろう。
その様に心奪われていると、感動がにじんだような声で、シャルルは静かに言った。
「君はーーーオレが思うよりもずっと、アルディの名に相応しいレディなのかもしれない」
そして続けたの。
あの時、華麗の館の闇の中で、声だけで聞いた、彼の告白をーーー。







「愛してる。永遠に、君だけを愛してる」







濡れたように輝く美しい瞳から、シャルルの愛が優しく注がれ、あたしは胸が震えた。

今もらった種は、きっと大輪の花を咲かせると思う。

誰も見たことがないような、きれいなきれいな花が。

だけどそのためにたくさん手をかけて、ふたりでそれを育てていかなけりゃならない。

アルディの庭を飾る、どんなバラにも負けない花を、咲かせてやるわ!

あたしたちふたりなら、きっとやれるはずだもの。









あふれる涙をそのままに、あたしはシャルルをそうっと抱きしめて、このあったかくあたしを満たしてくれる愛を分かち合おうと、唇を寄せるーーー





PPPPPPPPPPPPPPPPPPPP!!





突然その感動のキスシーンを見事にブチ壊すアラーム音が、あたしたちのムードをも引き裂いて、高らかに鳴り響いたっ。

ななな、なに!?

病院の機械かと思ったら、どうやらそれは、シャルルの私物のタブレットから響いてる。
アタマにきて窓からブン投げてやろうと鼻息荒くつかんだら、上からヒョイとシャルルに取り上げられちゃったっ、んもおおおおっ、いいとこだったのにぃ!
よどみなく動く指先で画面を操作しながら、やがてシャルルは、ある画面を凝視しながら動かなくなったかと思うと、何やらクックと笑い出した。
あたしが不審に思ってると、笑いながら無言でタブレットを差し出され、あたしはその画面を見てギョッとした!
なんとそこには、液晶いっぱいに無様にぶっ倒れて伸びてるあたしが、デカデカと映しだされていたのよぉおお!!
ぎゃあああ、なによこれえっ!?
どうやらそれは、メールに添付された記事のようで、宛名は親族会議で聞くシャルルの親戚の一人だった。
食い入るようにそれを見ると、記事の見出しが、これまたヒドイ!

『またもお騒がせ アルディのマダム・テメレール 世界遺産のシャンボール城で大目玉!!』

「な、なによこれえっ!?」
次々舞い込むメール群を、シャルルは見せてくれたんだけど、どれもこれもひどいったらありゃしない!

『アクション女優も真っ青 プティアルディ、今度はハリウッドに殴りこみ!?』

『マダムマリナ=ル・テメレール=ドゥアルディ フランスでは階段落ちはありません』

だいたいあれは事故なのにぃ!

しかもシャルルの扱いが”勇敢なシャルル・ドゥ・アルディ氏、またもや夫人の危機を救う!”みたいな、まるでインディ・ジョーンズばりに書かれてるじゃないのっ。
タブレットをつかむ手がワナワナ震える中、シャルルは涼しい顔でニヤニヤとこっちを見てる。
さ~て~は~、自分だけは保身のために手を回してるのねぇっ、キタナイわよシャルル!
ところでこの頻繁に出てくる”テメレール le Temeraire”て、何なのよ?
イラ立ち紛れにシャルルにそう聞くと、シャルルはさらに愉快そうに笑いをこらえながら、やっと口を開いた。
「フランスでle Temeraireといえば、ブルゴーニュ公シャルルのことだ。
13世紀のヴァロワ=ブルゴーニュ家の、事実上最後のブルゴーニュ公爵だよ」
は? なんでそんな人が、あたしの記事に出張ってくるのよ。
「別名、シャルル”無鉄砲”公。それで足りなきゃ突進公、猪突公、軽率公、豪胆公、大胆公ーーー」
な!!
「当時のフランス国家からの独立を画策し、ゆくゆくは神聖ローマ帝国の皇帝になる野望を持っていた、非常に血の気の多い御仁だよ。フランス国王より豪奢な暮らしをし、西ヨーロッパ大公の異名をとった貴公子だったが、王家に散々無謀なケンカを売って、最後は凍りついた湖で悲惨な末路を遂げた」
ななな……っ。
「それと、我がフランス海軍のル・トリオンファン級原子力潜水艦の、2番艦の名でもある。
艦名はもちろん、シャルル大胆公の二つ名、大胆を意味するフランス語からとったものだ。
この名を受け継いだ艦としては、今は16代目にあたるな。
代々アルディ家から排出された士官が、何度か艦長として任務についている。きっとそれも掛けたんだな、フフ」
ななななな! げ、げんっせん!?
日本が今それ系の大問題抱えてるって時に、日本人のあたしになんていうあだ名付けんのよっ、この自己チュー民族がっ。
あたしがあんまりな衝撃で打ちひしがれてるのに、追い打ちをかけるように、シャルルは高らかに言った。
「ああ、これで格式高いアルディ家がタブロイド誌の常連になるな、嘆かわしい。
オレも親族会議で吊し上げられるかもしれん、憂鬱だ。
そしてまたもサロンに話題提供か。
社交界には一線引いてたアルディ家が、君が来たとたん一転アルルカン(道化師)に転落とは、頭が痛い」 
それはそれは沈痛な面持ちで、それはそれは愉快そうに言うのよっ!
うわーん、こんな不名誉なあだ名いらないわよー!!
タブレットからはひっきりなしに、けたたましいアラーム音が鳴り続けてる。
メールがバンバン、ハングアウトがガンガン、Skypeがジャンジャン!

そして一番聞きたくない、怖ろしい音がドアの向こう、廊下の遥か彼方からやってくる。

恐ろしく規則正しい軍靴の音!

それは、偉くなったのにいまだに現場を離れない、バリバリ現役軍人の筆頭親族ルパートの恐怖の足音だった。
ただでさえ覚え良くないのに、シャルルを記憶喪失にして、あたし相当怨まれてるのよぉ!
つま先まで青ざめ引きつったあたしは、なんとか逃げようと、そろ~っとベッドを抜けだそうとすると、途端にがっきと手を取られた!!



「今は離れたくないんだよ、マリナちゃん。

なにせ ”恋しちゃってルンルン”、だからな」



顔にまったく似合わないセリフを満面の笑みで言うシャルルに、あたしは心底ゲンナリして、捕まった手を振りほどこうと、ブンブンぶん回したっ。
うわーん、シャルルがななめ上方向に壊れたぁ!

シャルルは暴れるあたしの手を巧妙に押さえつけ、彼らしい物憂げな微笑みをその頬に飾りながら、中世の騎士のように美しい所作で、その唇をあたしの手の甲に押し当て優しく囁いた。







「一緒に怒られてやるよ。

華麗の館でも言っただろ、ずっと一緒だって。


もう決して、この手は離さないよーーーTemeraire de l'amour(愛しの向こう見ず)」









長かった記憶の迷子の旅が終わり、ふたたびこの手に戻った時ーーー勢いよく開いたドアと共に、あたしは刺激的な愛と恐怖とを味わう生活に、また戻ったのだった。



ああっ、誰か、誰かっ、今この時だけでいいからっ、怒られる記憶だけ消して~~~~~!!!!!


















記憶の迷宮でだきしめて!     fin


この作品を、リクエスター嶌子さんと、シャルルとマリナを愛する全ての種たちに、そして最愛のパートナーTへ捧げます。

メリクリ☆シャルル!! 幸せになりやがれ~~~~っっ!!!(´;∇;`)ブワッ(←※12/15著 笑) 


















☆なんちゃってあとがき・ぷるぶつぶつ☆

『愛とは?』
ひとみ作品を通して、いつも語られる大きなテーマですね。
まあ、いつも頭を悩ませる大前提で挑んでおるのですが(笑)今回も手ごわかったwwwww

嶌ちゃんから『シャルルが記憶喪失で!!!』 笑www
このリクエストをいただいた時、「なんだこの山ザルは!?」リターンで、シリアス濃い目、フランソワゲストでマリナ泣かせ、シャルル苦悩の原作の愛のセリフ込みwwwという(実際はもっとちゃんとくれたよ 笑)原作厨の二次オタ飢えぷるに、フルコースを差し出されたような感じがしました(笑)
しかし書き始めて、こ~~りゃタイヘン( ̄□ ̄;)!!ぢゃんwwwとw
シャルルがまあ頑固でどうしようもなかった! 
そもそもシャルルにとって、”愛を繋いだところで、彼の本質は変わるのか!?”つのがもう未知ですからね(^_^;)

すげぇ別人クサイけど、それでもそれぞれのキャラと愛、想う相手への働きかけ、ぷるなりに濃く逝けたかな感はあり、結果とてもとても楽しく、また思い出に残るLPDらしいアツクルシイ作品になり大満足です(*^_^*)大笑

さて、嶌ちゃんが心の引き出しから引っ張りだしてくれた『The Rose』
タイヘン有名で、世界中から愛されてる曲ですよね~~~~~!
実は嶌ちゃん以外にも、この歌でリクくれた方、いるんですよ♪ ウハハww

ぷるも昔から辛くなると、何度も何度も聴いた、曲でした。
難しく考えるとこんがらがるからアレだけど(大笑)結局愛は『ひとりはイヤン』てことなんでしょう。
少なくともぷるはそうですが(笑)
ずっと一人ぼっちだった(環境、精神的共に)シャルル。
いや、私らだって同じです。
なにやったってうまく行かなくて、ナニやっても気持ちが晴れない、部屋に入りゃ世界には私ひとりなんじゃないか、人間はこんなにいるにも関わらず、なんでこんなに寒いんだ、と、天才シャルルに限らず、きっと誰もが一度は考えることでしょう。
愛は、ひとりじゃないことって、簡単なことに気づかず満たされず、怖くて怖くて縮こまる。
だけどそれじゃいつまでたっても芽吹けない。
種と人間の違いは、動けることです。
たまたま日陰に落ちちゃった種は可哀想にそのままですが、さいわいにも人間は、てめぇの力でおひさまの方に動けます。
やもすれば、自分がおひさまになることも可能です。

すっげえガンバレソングじゃないけど、辛く苦しい孤独な時でも、芽を出す時がきっと来る。
冷たい雪の下で眠る種は、春になれば必ず花を咲かせる。

そんな希望を忘れちゃイカン。
オシエルで「死んだように生きるのはごめんだ」
エクートでも「やってみなくちゃわかんない」
ぷるはこの歌から、今まで書いたことをなんとなく思い出していました。
私はとんでもなく生き下手なので、無数に大恥をかいてきましたが(大笑)それもオレ、と受け入れようと思います。
シャルマリも、そんな感じで歩いて行ってくれればなと、そんな願いをこめてこのお話を書いてみました。
アイなんてな~たぶん、己の感じ方ひとつでしょうし、答えがアルわけじゃない。
それぞれが、隣にいる人を大事に想えば、それでいーんじゃないですかね、ねぇシャルル。
でもおそらくは、これだけはハッキリしてるかも。
恋は自分本位、そして愛は、相手本位。
ん~~~~(^_^;) しかし愛ばっかで達観しちゃうのもツマンナイから(大笑)LPDでは、コイとアイそろって、こっ恥ずかしい恋愛模様をふたりに描いて欲しいカナ♪ ニャハハハ~


あ! そうだそうだ(笑)
これを書き上げた直後、ふと年末のテレビを見ると、世界の感動エピソードすぺしゃる!みたいな感じで、なんと自分の結婚式直後に、『解離性遁走』に陥ったカップルの話をやってたんですよ!!! \(◎o◎)/!
味噌汁吹きましたねwww
新郎は自分の結婚式の帰り道に、なんと不幸にも、親友が交通事故で死んでしまってひどく落ちこんでいました。
その悲しみを抱えたまま、幸せの絶頂で新婚旅行に旅立とうとした空港で、彼は煙のように姿を消してしまったらしいのです。
新婦はそりゃもう必死に探しますよね。
そして3日後ーーー警察に保護された彼は、ホームレスのようにボロボロの姿で、記憶の一切(基本的な生活史すら、例えば花の名前等まで)を失って、彼女のもとに戻って来ました。

ぜんっぶですよ、自分の生い立ち名前は元より、親兄弟、親戚仕事、住所年齢、歯磨きの仕方等、パーーーーンとまっさら!!
でも新居も買っちゃったし、彼を好きだからと、彼女は同居を申し出てなんとか彼の記憶を取り戻そうとするわけですよ。
でも、現実は小説のようにうまくいかないですわな。
成果や予兆もあらわれず、1年間、他人行儀のよそよそしい彼に、彼女はヘトヘトになります。
彼だって、いい加減ウンザリですよね、ツライ態度も取るわけですよ。
身内からはもう諦めろと矢の催促、でもそこで彼女、どうしたと思います?

「よし! じゃあ、また恋からはじめればいい」

ビックリしましたね~根性ありますね~泣けましたマジで(TT)
そんな彼女のしなやかな想いが伝わったのか、彼は彼女にまた恋をするわけですよ!!!
も~~も~/// うヒョォおおおwww(>∇<)でした♪
んでもって、しばらくして、おこるわけですよ奇跡が!!!!!
彼の記憶を引き戻すために、家中に飾ってあった写真。
ある時、シャワーを浴びてでてきた彼が、洗面所にあった結婚式の写真を見て、いきなり我に返るのですよ~~~~~~~~~~~~っ

。゚(゚´Д`゚)゚。

そんで、彼女の努力は報われ、1年後、彼は、元の彼の記憶を取り戻し、めでたしめでたしwww
となるわけです( ´∀`)
実話ですよ~~~?? すげぇえええ//////
自分だったら、こんな根性ないっっっ _| ̄|○
そんで、書いた話があまりにご都合主義だった!!!!!テヘペロ~~~~~///と叫びました(大笑)

ちなみに解離性遁走は
『解離性遁走とは、突然、不意に家や職場から遠くへ旅立ってしまい、過去を思い出すことができないものを言います。
情動的に苦痛を味わった体験から逃れたいという欲望によって、遁走が引き起こされるとします。』

幸せの絶頂で(結婚式)、不幸のどん底(親友の喪失)を同時に味わってしまったから、引き起こされた精神障害だったようですね。
つか、誰でも普通にあることですよね、こういうことって(精神障害おこしちゃうことは稀だけど)

だからシャルルも、あの天才気質なら精神的に追い込まれてもおかしくないな、と思い、あんなふうに書いてみました~~~
あんなんなって生きてたら、そりゃ疲れるわさ(・_・;)

マリナちゃん、どうかシャルルを幸せにしたってください!!!!!
血を吐くようにwww オ ネ ガ イ (;゚;ж;゚;)ブッ





さてさて、長くなりましたが、なんちゃってあとがき・ぷるぶつぶつでございました。
お粗末(=^・^=)

それではまた、次のリク創作でお会いしましょう~~~♪




読んでくれて、ありがとよ~~~~~~~!   ------LPDUnderぷるぷる







拍手いただけるとガンバレます( ´∀`)



9 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめてコメントいたします。
何をいっていいかわからず、呆然としていますが、ただ感動です。
本当に感動して涙が止まりません。
こんな素敵なシャルマリをかいてくださって、ありがとうございました。
幸せです。

HK さんのコメント...

ぷるぷる様、ご無沙汰しております。今年もよろしくお願いいたします。
シャルルが、少しづつ、マリナちゃんのことを思い出していくプロセスが
とてもよかったです。
馬の餌にまで手を出したマリナちゃんに笑ってしまいました。
素敵な作品を有難うございます。

朱夏 さんのコメント...

ぷるぷるさま、こんにちは☆

こちらのお話、何度読んでも号泣です…。
シャルルの抱える深い孤独、それをマリナの前にさらけ出す様が、なんとも言えない位に心を打ちます。
原作読んでいるみたいに、シャルルとマリナが自然で…幸せな気分になります。

素敵すぎて言葉がありません。とにかく、ありがとうございます!

リアルがお忙しいようですので、お身体に気をつけてお過ごしください☆

あおみ さんのコメント...

ぷるぷる様

このお話すごいです。泣いちゃいました。
実は、藤本ひとみ先生がぷるぷる様なのか…なんて考えちゃいました。

シャルマリ、こんなに素敵すぎて脱帽です・・・

匿名 さんのコメント...

ぷるぷる様
素晴らしい作品でした。これから、谷口亜夢先生の「マリナ恋冒険」を読み返し、シャルルが螺旋階段から飛びおりて鍵を手渡すシーンに浸りたいと思います‼
本当に素晴らしい創作です。応援してます‼


マリエール☆より

匿名 さんのコメント...

このお話、もう何度読んだかしれません、本当に心を揺さぶられます。
シャルルの葛藤、マリナの葛藤が肌で感じられ、苦しんだり笑ったり泣いたりという感情が自然と浮き上がってきます。
もし二人が付き合ったら、本当にこういうことがありそうで、唸らずにはいられません。
ぷるぷる様の創作は1作ごとにそれがひしひしと迫ってきて、何度も何度も読み返してしまいます。日々の潤いをいただいています。
とてもお忙しそうですが、ぷるぷる様のペースでかまいませんので、ずっと二人を生きさせてあげてください。
陰ながら本気で応援させてください。Rもシリアスもコメディも、ぷるぷる様の創作が大好きです。書いてくださってありがとうございます。

ぷるぷる さんのコメント...

ようこそ匿名さん///

お返事遅くなりスミマセンです;;
こげなデロリンチョな愛”のみ”でしか運営しておらんLPDへの熱烈なお言葉……( TДT)
現在リアルでげちょげちょなぷるには、相当な高級燃料でゴザイました!!!!!
ゲファぁっっ///(吐血)
ありがとうございます、ありがとうございます!;;
大切なお時間を使ってまで…!ぐぉおおっっ
こちらに掲載しているものについては、ほんっっっと~~に己の希望や欲望マルダシのブツばかりなんで…( TДT) 
原作では叶わなかった夢を、少しでも感じ取りたい一心で(笑)タダのはっぴーらぶらぶヒャッハー♪ではなく、奴らを考えさせ苦しめ、それでも繋がっていく道みたいなものを見たくて、そこを付かず離れず歩いて行く彼らが見たくて(;□;)www描いてきた世界ばかりです(爆笑)
たまに、ナンデこんなに苦しめてんの???とか自問自答するんですがw
匿名さんのお言葉で、ソレでよかったんだと肯定でき、ひっじょーに今シアワセぽややんでございます!!! あじがとっす!!!!。・゚・(ノ∀`)・゚・。
いつもヨロヨロ活動で申し訳ありませんが、自分の愛を貫くべく(笑)まったりしかしシッカリとこの世界を味わっていきたいと、決意を新たにできました♪
その道を匿名さんといっしょに歩けることを、嬉しく思います( ´∀`)

大好き。
この歳になるとイササカこそばゆい響きではありますが、心底うれしかとです。
こちらこそありがとう、匿名さん!!

ぷるぷる さんのコメント...

し、しまった(;´Д`)
も、申し訳ないです!!!!!ぎゃぁぁぁっぁ_| ̄|○
忙しい時期でコメ返出来ておらんかったとですね、ココ…;□;
うっうっ、管理が行き届かず、もうゲストさん方に顔向けでけん。。。ぐぬぬ
本当にごめんなさい~~~!!!!!!!!!!!!( TДT)

匿名さん、お言葉ありがとうございましたm(_ _)m
涙・・・!? ナミダ・・・っっ(・_;)
このgdgdぷるめに、よもや読み手さんの感情を揺さぶれるモノを綴れるとは・・・///
基本私の活動はシリシヨクのジコマン、至極身勝手なモノであると自負しているので、共感をいただけたり感謝や感情の推移をお知らせいただくと、アタマがマッシロになるほど震えます///
リアルの隙間でのユルユル活動で申し訳ないのですが;;こちらこそ匿名さんに感謝を捧げたいです!
大切な時間を使って、読んでくれて、ありがとう!!
そしてお返事遅くて、ごめんなさい!!!!!m(_ _;)m

ぷるぷる さんのコメント...

ぎょええええええええええHKさんンンンンンン( TДT)

いつも安定のクズクズぶりで申し訳ないです!!
1年以上前のコメ返、失礼致しますっっっ_| ̄|○
HKさんもお忙しいでしょうに、いつも感想本当にうれしっす! イヤほんとに大感謝でございますっっ;;
・・・実はね~~(^_^;)ほんとはマリナちゃんがシャルルの記憶を取り戻そうと奮闘して、ケチョンケチョンに傷つく姿も、もっと書きたかったんだけど(笑)テーマにそぐわなくなるから泣く泣く削ったんですよこの話~~www
シャルルの淡い初恋の邂逅、書いててすごく楽しかったデス(#^^#)
まさにシャルルにとっても、『愛の迷宮』に迷い込む、とても大事な作品でしたもんね! シャルマリストにとってはシュノンソーはじめ、あの界隈は聖地ですものwww
そこを愛を繋いで(創作だけど;;シクシク)再び愛を失ったふたりが歩くのが、すごく新鮮で、ハラハラした記憶があります♪
・・・和矢のこともw うっふっふwww
マリナ馬、シャルルという餌を目の前に(笑)必死に駆け抜けましたよwあはは!
読んでくれて、ありがとございますっ☆